若年層の労働力人口率の減少

若年層での失業率の高さは男女ともに際立っています。15~24歳の若年層と全年齢平均の完全失業率を比較すると、15~24歳の失業率が全年齢平均の2倍に達しています。引退前後の世代である55~64歳や65歳以上でも、若年層に比べれば失業率は低くなっています。
若年失業率が、他の年齢層よりも景気に敏感に反応しています。1990年代後半や2000年代半ば以降の景気後退期、コロナ禍の拡大期には、他の年齢層よりも若年層で大きく失業率が高まっています。これは日本だけでみられる傾向ではなく、どの国でも景気悪化の影響を一番受けるのは若年労働者です。
若年失業の問題は短期的なものにとどまりません。学卒時すなわち初職の就職を迎える時期に非就業だったことは、生涯の就業状況を悪化させ、所得など経済厚生を低下させることが多くの研究でわかっています。そして非就業者の増加は、社会保障費の増大につながるという意味で、個人の問題ではなく社会全体の問題といえます。不景気という個人の責任ではない外的ショックによる若者の厚生ロスは、教育を受けている世代つまり次の労働力世代の学ぶ意欲もそぐ可能性があります。
若年層には高失業率以外にも特徴があり、景気後退期に非労働力化が進みます。若年層には教育を受けている者も多いため、労働力人口比率が他の年齢層より低いのは当然ですが、景気後退期に彼らの労働力率が低下しています。他の世代では比率がほぼ変化しない男性一般や、特に2010年代に労働力化が進展した女性一般とは対照的です。
若年層の失業率や労働力人口率の改善のためには、労働需給双方のマッチング機能を向上させることが必要になります。近年の研究によれば、仕事紹介アプリの活用が若年就業率を高めるとされています。また、就業支援機関での就職紹介や、若年求職者向けの就業・求職訓練が、求職者の健康状態や求職意欲を向上させ、就職率を高めています。
学齢期すなわち学校で、働く意識を高める学びや職探し方法の習得が必要です。自らの手で仕事を選択することの重要性や選択方法が教えられるべきです。学校から仕事へのスムーズな橋渡しを目指すことが重要である。

(2022年6月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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