診療報酬の2020年度改定―Ⅰ

改定の要点
診療報酬は、医師や看護師らの人件費と設備投資などに回る本体と、薬代の薬価で構成されています。2年に1度、見直されています。政府が定める医療サービスや薬の公定価格である診療報酬は、2020年度の見直しで改定率がマイナスになる見通しです。高齢化による社会保障費の伸びを抑えるため、薬価を引き下げる一方で、医師の人件費などに回る部分は、引き上げる方向で検討が進むと思われます。
厚生労働省の公表によれば、2018年度の病院の損益率は-2.7%の赤字であったとされています。そのため、厚生労働省は本体をプラス改定とする方向で調整するとみられます。一方、薬の市場価格との差を埋めるため、薬価はマイナス改定とする見通しです。薬価の引き下げ幅が本体の引き上げ幅を上回り、全体の改定率はマイナスになる見通しです。
高齢化に伴って、国民医療費は過去10年間で平均で年2.4%ずつ増えており、今年度の予算ベースでは約46兆円にものぼります。公費と保険料、患者の自己負担でまかなわれており、診療報酬によって左右されます。全体の改定率がマイナス1%になると、公費は1,800億円、保険料は2,300億円、自己負担は600億円、それぞれ減らせる計算になります。政府は、高齢化などに伴う来年度の社会保障費の増加分を、5,300億円程度と見込んでいます。年末にかけて本格化する予算編成では、4千億円も視野に入れて削減したい考えです。そのためには、診療報酬全体のマイナス改定は避けられません。

(2019年11月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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