診療報酬の2020年度改定―Ⅱ

勤務医の働き方改革
厚生労働省は、医療機関に支払う診療報酬の2020年度改定で、勤務医の長時間労働を改善する医療機関への報酬を増額する検討に入っています。医師を補助する医療従事者を雇う病院に人件費を手当てする必要があると判断しています。薬剤料など薬価の引き下げで、診療報酬全体はマイナス改定になる見通しですが、病院の働き方改革を後押しするため、医師の技術料などを引き上げる方向としています。
厚生労働省が公表した医療経済実態調査によれば、医療法人が運営する病院の2018年度の利益率は、前の年度よりも改善したものの、2.8%と診療所の6.3%より低い水準でした。人件費が収支を圧迫しており、赤字の国公立病院も多くなっています。病院に勤務する20~30歳代の外科医の約4割は、月240時間も残業しています。厚生労働省は本体部分の報酬アップによって勤務医の働き方改革を後押ししたいと考えです。医療現場では、若手の過重労働で支えられていますが、政府は2024年度から医療機関にも残業時間の上限規制を導入します。残業を減らしつつ、医療サービスの縮小を招かない対策を進めることが急務となっています。
しかし、本体部分の報酬を引き上げれば、原則3割を医療機関の窓口で支払う患者の負担も増えてしまいます。本体部分もマイナス改定にしないと医療費の膨張が続くとの財務省の考えもあります。入院や救急医療を担う病院への報酬を厚くする必要性は認めるものの、診療所など他の医療機関に支払う報酬を抑えることで、財源を捻出すべきとの考え方もあります。

 

(2019年11月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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