認知症の遺伝子治療

認知症の多くを占めるアルツハイマー病を遺伝子治療で治す研究が始まっています。WHOによれば認知症は、認知症は、世界中で毎年約1千万人が発症し、患者数は約5千万人いるとされています。低中所得国を中心に患者数は増加しており、2050年には1億5,200万人になるとされています。最も多いアルツハイマー病が患者の6~7割を占めています。
米国などで2つ以上のアルツハイマー病の遺伝子治療の臨床研究が進行中です。標的となっている遺伝子は、臨床応用に最も活用しやすいと考えられている遺伝子の一つ、APOE4です。アルツハイマー病の患者の多くが持ち、強く働くと発症リスクが上がります。米コーネル大学のチームは、APOE4の働きを阻止する遺伝子を、アルツハイマー病や前段階の軽度認知障害の患者15人に投与し、安全性などを確かめています。
国内でも臨床応用を視野に入れた研究開発が進んでいます。しかし、本当に認知症で遺伝子治療が有効かどうかは不透明です。最大の課題は、治療の標的となる遺伝子が決まっていません。アルツハイマー病は、発症や進行の機序が複雑で、多くの遺伝子が関与するため、複数の標的遺伝子が考えられます。安全面など課題も多いのですが、手詰まり感のある認知症の根治に道を開く可能性を秘めています。

(2020年12月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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