進む少子化、打開策は

これまで国は、人口問題に関して“ショック”という言葉を2回使用しています。1966年の丙午の年の出生率1.58を1989年に下回った際に、1.57ショックとして注目され、様々な少子化対策が講じられるようになりました。それから30年以上が経過し、育児休業や保育施設の整備、子どもの医療費の助成など、制度は昔に比べ整ってきました。しかし、2019年の出生数が90万人を初めて割り込み、86万5千人となった現状を86万ショックと呼ぶべき状況であると、2020年版少子化社会対策白書で改めて危機感を表現しています。
2021年の出生数は約81万人と過去最少を更新し、出生率は1.30に落ち込みました。出生率が過去最低だったのは2005年の1.26ですが、この年は約106万人の子どもが生まれていました。出生率は、1人の女性が平均的に子どもを何人産むかを示しています。一方、出生数は、子どもを産む年齢層である15~49歳の女性の数に左右されます。1人で多く産んでも、産む女性の数自体が減れば少子化は進みます。この年代の女性は2000年には2,932万人いましたが、2021年は2,453万人と激減しています。生殖年齢にある女性の減少が、少子化を加速化させています。
わが国の夫婦の平均的な子どもの数は減少しているものの、ここ40年ほどはほぼ2人を維持しています。日本では結婚後に出産という意識が根強く残っており、婚外子の割合は2%に過ぎず、諸外国に比べて極めて低率です。結婚しないと子どもが産めないとする風土があります。2021年の婚姻数は戦後最少の約50万件とピーク時の半分以下で、特に若者の結婚離れが少子化に大きな影響を与えています。
結婚や出産は個人の価値観や選択に基づくものであることは大前提です。しかし、わが国の実態を踏まえた少子化対策には、結婚を望む人が結婚できる環境の整備、夫婦が望む数の子どもを産めるような支援の充実という2本柱の対策が欠かせません。望む人が結婚しやすく、産み育てやすい国にしていくと同時に、今後は低出生率でも社会を成り立たせるための議論も必要となります。政府は少子化対策の充実を急いでいますが、出産と結びつきの強い結婚の減少など実態を踏まえた対応が重要となります。

(2022年8月14日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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