運転免許自主返納件数の増加

東京・池袋で2019年4月、乗用車が暴走して11人が死傷した事故は、高齢ドライバーの運転に関する安全対策や免許証の自主返納が進むきっかけとなっています。警察庁によれば、免許の自主返納は池袋の事故があった2019年に60万1,022件と過去最多を記録しています。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響で55万2,381件に減少しましたが、2018年比では31%増えており、高齢者ドライバーの免許返納の機運は着実に高まっています。
現行法は、75歳以上の免許更新時に認知機能の検査を義務付け、認知症と判断されれば免許は取り消しや停止になります。2022年6月までに施行予定の改正道交法は、過去3年以内に信号無視や速度超過などの違反歴や事故歴がある運転者を対象にした運転技能検査の導入を盛り込んでいます。サポカー限定免許も創設します。
しかし、公共交通機関が十分に整っていない地方では、車は生活手段として欠かせず、簡単に免許を手放せないという事情もあります。高齢者の免許返納を一段と進めるためにも、交通弱者への支援が必要です。都市と地方の間で、車のない生活に大きな差が生じないように、国や自治体が中心となって合理的に移動手段を整備すべきです。

(2021年9月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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