運転手に対する脳ドッグの必要性

くも膜下出血を起こしたとみられる運転手男性のタクシーが歩道に突っ込み、女性1人が死亡、歩行者ら4人が負傷した事件が起きました。男性は、乗務歴25年以上のベテランで、年2回の健康診断を必ず受け、今年7月の健診でも異常はなかったとされています。
国土交通省によると、2019年までの5年間に、乗務中に健康状態の悪化で事故を起こしたり、運転を中止したりしたタクシー運転手は、計284人に達しています。くも膜下出血などの脳疾患が69人で最も多く、心筋梗塞などの心臓疾患が54人でした。背景には運転手の高齢化があります。全国ハイヤー・タクシー連合会によると、今年3月時点で全国のタクシー会社の運転手約26万人のうち、65歳以上は47%に上っています。

 

国や業界は、労務の適正化や、健康管理の強化に取り組んでいます。くも膜下出血などのリスクを調べる脳検査、いわゆる脳ドッグの推進です。個人タクシーの業界団体は、約5年前から脳検査の半額を補助する制度を開始しています。国土交通省も、2018~2020年度、脳検査を受診したタクシーなどの運転手約1万人に1人あたり5,000円の協力金を出しています。
全国のタクシー事業者約500社のうち、従業員に脳検査を受診させているのは7%にとどまっています。しかし、中小のタクシー会社は、健康管理に投資する余力がないケースも多く、国が補助制度を充実させる必要があります。くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂によって起こります。予防のためには脳ドッグを受診するしかありません。

(2021年9月19日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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