選択的夫婦別姓について憶うこと

自民党の有志議員が、選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟を近く発足させます。党内では選択的夫婦別姓について検討するプロジェクトチームを設置して、論点整理を進めることにしています。設立趣意書では、婚姻にあたり、氏を通じ、国民が自分らしく生きることができる社会の発展を目指すなどとしています。
選択的夫婦別姓の議論が久々に表舞台に出てきた感じがします。政治のみならず、経済界でも問題提起の動きがあります。昨年、政治の場で本格的な議論が再開しました。2002年にあった議員立法の動き以来、実に18年ぶりのことです。政治が停滞していた間にも、世の中の動きは加速しました。女性の社会進出がさらに進み、若い世代は選択的夫婦別姓を強く求めています。
選択的夫婦別姓が日本の伝統を壊してしまうとの懸念は、論理的ではありません。夫婦同姓の慣習は、歴史の中で変化してきたものだからです。硬直的な制度のために、家族になるのを前向きに捉えられない若者がいることも事実です。結婚を遅らせたり、断念したりせざるを得ない例もあり、出生率の低下にもつながっているのかもしれません。
名前は私たちが誰であるかを教えてくれるものです。結婚の際に姓の変更を強いる日本の制度は、現在では世界でもみられず、非常に奇異な制度となっています。女性が男性より自分の姓に愛着が少ないとは言えません。男性の姓の方が優れているわけでもありません。それなのに、なぜ女性ばかりが望まない場合も姓を変えなければいけないのか。男女平等の戸籍制度を作るのは十分可能なはずです。夫婦別姓を法的に認めるのは米欧でも簡単なことではありませんでした。米国では1970年代にようやく選択的夫婦別姓が導入されました。
わが国でも女性も男性と平等に社会に貢献することが期待されています。選択的夫婦別姓に反対する人は、家族を弱体化させると主張していますが、婚姻制度で女性に平等を与えるのは、むしろ家族の絆を強めることにつながると思われます。日本の政治家が、選択的夫婦別姓に関する立法に取り組めば、日本がジェンダーの平等に向かって進んでいると世界に示すことができます。職場環境の整備なども、女性だけでなく、全ての働く人に視点を移さない限り、日本のジェンダーの平等は進みません。

(吉村 やすのり)

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