選択的夫婦別姓について憶う

男女共同参画基本計画は、あらゆる分野で男女平等を進めるための基本方針を定めます。2021年度から始まる第5次男女共同参画基本計画の案から、選択的夫婦別姓という文言が消えてしまいました。法制審議会が、選択的夫婦別姓を盛り込んだ民法改正案を答申して四半世紀近く経っています。政府は、選択的夫婦別姓について、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進めるとしています。
現状では、96%の女性が夫の姓を選んでいます。内閣府が2017年に実施した世論調査では、賛成派は42.5%と反対派を13.2ポイント上回り、30代は賛成が52.5%を占めています。家族の姓が違っても一体感に影響がないと思うとする人も64.3%にのぼっています。
1986年の男女雇用機会均等法施行から30年以上たち、働く女性が増えました。結婚後に姓が変わることで業績が分断されるなどの不利益は、かねてより指摘されてきました。一人っ子の実家の姓を残したいとの希望も強いものがあります。海外では選択制や別氏制が一般的です。国連は、夫婦別姓を認めない日本の民法規定が差別的だとして是正勧告を3回出しています。
選択的夫婦別姓の導入に前向きな意見が多数となる中、次期男女共同参画基本計画に、必要な対応を進めるという原案の記述が盛り込めなかったのは残念です。制度に反対する自民党保守系議員は日本の伝統が壊れると主張していますが、同姓制度は1898年の民法制定以来、100年余りの歴史しかありません。選択的夫婦別姓は、すべての人に別姓を強いるのではなく、希望する人が選べるようにするものです。旧姓の通称使用の拡大では限界があります。法的根拠がありません。

(2020年12月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。