開発中のコロナワクチン

世界保健機関(WHO)によれば、開発が進むワクチンのうち38種類が治験に入っています。治験は一般的に3つの段階を要します。初めの第1相は少人数の健康な人で安全性を確かめます。第2相は少数の患者で、有効性や最適な量などを調べます。最終的な第3相で多数の患者に投与し薬効を確かめることになります。ワクチンの開発には10年以上かかることも珍しくありません。
新型コロナで最終段階に進んでいるワクチンの一つが、ウイルスベクターというタイプです。新型コロナウイルスの遺伝子の一部を、人に病気を起こしにくい別のウイルスに入れて体内に運びます。遺伝子からコロナウイルスの一部ができると、免疫が得られます。ウイルスベクターは、体内に運ぶために使う別のウイルスが病気を引き起こすリスクもあります。
ウイルスの遺伝情報の一部を直接体内に入れる遺伝子ワクチンも開発が短期間でできます。遺伝情報であるDNAやRNAをそのまま使います。新型コロナでも治験が最終段階に入っています。遺伝子ワクチンはウイルスそのものを使わず人工的に合成できるため、生産速度が早く緊急用に向いています。免疫反応が起きにくく、ワクチンとして予防効果が得られにくいとの指摘もあります。
既存のワクチンで実用化されている従来タイプでも開発が進んでいます。VLPワクチンもその一つで、阪大微生物病研究会が開発中です。VLPはウイルス用粒子の頭文字、いわばウイルスの殻を使ったVLPワクチンもその一つです。外見はコロナウイルスそっくりで体内に入って免疫反応を起こしますが、中身は無いので、ウイルスが増えることはなく病気を起こしません。B型肝炎や子宮頸がんワクチンで実用化されています。殻にあるウイルスの一部を投与するのは、組み換えタンパク質ワクチンです。タンパク質だけでは免疫反応が起きにくいため、効果を高めるアジュバントを混ぜて使います。インフルエンザワクチンで承認されています。
従来タイプには、ウイルスの毒性を弱めた生ワクチンや感染性や病原性をなくしたウイルスやその一部を使う不活化ワクチンがあります。生ワクチンは麻疹など、不活化ワクチンはインフルエンザ、日本脳炎、ポリオなどで実績があります。
コロナウイルスのワクチンを巡っては、体を守る抗体が逆に感染を促すADE(抗体依存性増強)が懸念されています。重症急性呼吸器症候群(SARS)などのワクチン開発では、動物実験の段階でみられています。新型コロナワクチンは新しい技術を取り入れたものが多く、承認後も副反応が起きないか継続して観察する必要があります。

(2020年9月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。