障害者のための歯科医師

心身に障害がある患者が、安心して受診できるよう配慮した歯科が広がっています。障害の影響で、長時間じっとしたり、症状を伝えたりすることが難しく、受診ができないことが多くなってしまいます。診療室をバリアフリー化し、指示を視覚で伝える専用カードや麻酔を使うなど工夫しています。日本障害歯科学会によれば、歯科治療で知的障害や自閉症の人は、痛みを伝えにくい傾向があり、体の麻痺や注意欠陥多動性障害(ADHD)の影響で、診察台に座り続けることが難しい人もいます。ノウハウのない一般の歯科では受診を断られるケースもあります。同学会によると、障害者に配慮した診察はもともと小児歯科から始まりました。
学会は、2003年に、障害者の治療に精通した歯科医師を認定する制度を設けています。一定の障害者の治療経験などを条件に試験に合格する必要がある制度で、2018年5月24日時点の認定歯科医は1,160人です。10年間で約1.5倍に増えています。2011年に障害者が定期的に歯科検診を受けられるよう国や自治体に取り組みを促す、歯科口腔保健推進法が成立しました。2016年には、民間事業者に対し、障害者への合理的配慮を求める障害者差別解消法も施行されました。こうした法律が、障害者に対する意識を高め、配慮した歯科治療が広がる背景の一つになっています。

(2018年10月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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