非製造業の生産性の低さ

非製造業は国内総生産(GDP)の8割を担う一方で、低賃金のワナという問題を抱えています。生産性の低さが響いて賃金を増やせず、優秀な人材を集められないから、生産性の低迷から抜け出せません。非製造業で1時間の労働から生み出される付加価値(2016年の名目値)は4,564円で、製造業の5,704円より2割近く低くなっています。製造業では機械化が世界的に進んだ一方、日本の非製造業は、小規模で非効率という特有の事情もあります。1994年以降の業種別の推移をみると、宿泊・飲食サービスは2,500円前後で停滞し、保健衛生・社会事業はむしろ悪化しています。
卸売・小売業の事業所を日米で比較したところ、小規模な10人未満は米国で約5割にとどまるのに対して、日本は約8割と多くなっています。日本の非製造業の労働生産性は、国際的にも見劣りし、米国を100とすると、日本は50.7でしかありません。生産性の低さが響いて賃金水準も見劣りします。国税庁の民間給与実態統計調査によると、卸売・小売業の2017年の平均給与は314万円で、製造業の472万円を約3割下回っています。今後は人手不足が一段と深刻化します。2017年末で約7,500万人だった日本の生産年齢人口(15~64歳)は、2065年には約4,500万人に落ち込むと推計されています。低賃金の働き手を探すのは一段と難しくなり、生産性の低さを放置すれば立ちゆかなくなってしまいます。

 

(2019年3月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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