風疹の流行

風疹の流行拡大が止まりません。今年に入ってからの患者数は、首都圏を中心に800人に迫り、大流行した2013、2012年に次ぐ3番目の多さです。風疹は話や咳をした際に飛ぶ小さな水滴(飛沫)でうつります。1人の患者から6~7人にうつるとされ、いったん増え出すと拡大のペースは止まりません。人混みや通勤・通学時の混雑した電車内などはウイルスの拡散に格好の場所となります。このため、都市部から周辺に広がっていく傾向にあります。今回も東京や千葉など首都圏での発生が目立っています。風疹の主な症状は、発熱、紅斑のほか、耳の後ろや後頭部、首付近のリンパ節の腫れなどです。ほとんどが軽い症状で済みますが、稀に脳炎や血液の病気を引き起こします。
特に問題なのは、妊婦が感染した場合です。ウイルスが母を通して胎児に感染すると、出生児が目や心臓に異常のある先天性風疹症候群になる恐れがあります。その確率は、母親が風疹に罹ったのが妊娠1カ月の時なら50%以上、2カ月で約35%と、妊娠初期ほど高くなっています。今年の患者の内訳をみると、男性が女性をはるかに上回っています。特に目立つのは30代後半~50代前半です。既婚者も多いとみられ、家で妊娠中の妻にうつす危険があります。国は当初、女性だけをワクチン接種の対象としていました。56歳6カ月未満の女性なら、1回は接種を受けています。しかし、39歳6カ月以上の男性は、接種の機会がありませんでした。理想的とされる2回の定期接種を受けているのは、現在28歳6カ月未満の男女のみです。結果として、ウイルスに対抗する抗体を持たないために感染した中高年の男性患者が多くなっています。

 

(2018年10月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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