風疹の流行

風疹の症状は、リンパ節の腫れや発熱、発疹などで、症状が全く出ない人がいたり、軽い人では風邪との区別が難しかったりします。しかし、妊娠20週ごろまでの妊娠が風疹に感染すると、胎児の目や耳、心臓に障害が残る先天性風疹症候群(CRS)を発症します。母親が風疹に罹った時期が妊娠初期であるほど、子どもに障害が出る可能性が高く、その確率は妊娠1カ月なら50%以上、2カ月では約35%になります。
風疹の予防には、体内に十分な抗体ができるとされる2回のワクチン接種が理想的ですが、国の定期接種で男女ともに2回の接種ができているのは、1990年4月2日以降に生まれた人たちだけです。これより年上の人は、感染の危険性があります。現在、患者数の多くを占める30~50代の男性は、抗体の保有率が特に低い年代とされ、少なくとも5人に1人は抗体を持っていません。風疹はインフルエンザよりも感染力が強く、1人が罹ると5~7人にうつるとされています。
風疹は防げる感染症なのに、これまで何度も流行を繰り返してきました。妊婦や周りの人が注意するだけではなく、企業が社員に向けた対策を行うなど、社会全体で「風疹をなくそう」という取り組みを進めることが必要です。厚生労働省は、来年度から30~50代の男性を中心にした抗体検査費用を無料にする方針を明らかにしています。こうした風疹の流行、先天性風疹症候群の発症には、わが国のワクチン政策のあり方が大いに関係しています。

(2018年10月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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