風疹ワクチンの定期接種に憶う

国内の風疹患者は昨年、首都圏を中心に発生し、計2,917人の感染が報告されました。前年の93人に比べ、大幅に増えました。風疹は妊娠初期の女性がかかると、赤ちゃんが先天性風疹症候群(CRS)にかかり、目や耳、心臓などに障害が残る恐れがあります。2012~2013年に流行した際にはCRSの赤ちゃんが45人生まれ、うち11人が亡くなりました。治療は対症療法以外になく、ワクチンで防ぐしかありません。米国の疾病対策センター(CDC)が昨年10月、風疹の免疫がない妊婦は日本に渡航しないよう勧告を出しています。
今の制度では、1歳と小学校に入学前の2回、ワクチンの定期接種を受けます。しかし、制度が何度も変更された影響で、現在39~56歳の男性は定期接種の機会がありませんでした。このため、免疫を持つ人の割合が低くなっており、今回の流行の中心も30~50代の男性です。そこで厚生労働省は昨年12月に2019年から3年間、現在39~56歳のうち、検査で免疫が十分でないと分かった人は、原則無料でワクチン接種を受けられることにしました。新たに接種対象とする年代は約1,600万人で、このうち実際に免疫がないのは2割程度です。そのため抗体検査をして、陰性者にワクチンを接種することにしています。今回の対象者となる働く世代の男性たちに、いつ抗体検査や予防接種を受けてもらうのかという課題が残ります。
本来は抗体検査などせずに、ワクチン接種を受けていない世代の男性全員を対象にするのが一番確実です。35年前、米国に留学した際、長女が小学校に入学するために、風疹ワクチン接種の証明書が必要とのことでした。その際、小児科医に抗体検査をお願いしたところ、それよりワクチン接種した方が早いとの返事でした。確かに抗体検査の結果を聞きに行く手間を考えれば、ワクチンを打った方が確実ですし、早く済むし、金額も安価です。米国のワクチン接種の考え方の合理性に納得したものである。日本ではよく抗体検査を行いますが、定期接種が行き届いていれば検査の必要性はなくなります。

(2019年1月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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