飲食が感染リスクに与える影響

新型コロナウイルスの感染症に対する緊急事態宣言が、10都府県で3月7日まで延長されました。感染対策として飲食店の時短営業の要請は続いています。政府は、約1カ月間の対策で飲食店での感染者数が減る効果が見えてきたとしています。感染経路を追えている地方で、飲食に関する感染例が多いことに加えて、先行する海外の研究結果などを参考に飲食店への対策に踏み出しています。
米スタンフォード大学などは、商業施設などではフルサービスのレストランの営業再開が、最も多くの感染者を増やすとする結果をまとめています。米疾病予防管理センター(CDC)も、飲食店に行くなどマスクの着用や人との距離保つのが難しい場面が、感染の重要なリスクになると指摘しています。英ウォーリック大学の報告によれば、外食を促す施策が感染状況を悪化させたとしています。
感染を防ぐための効果的な飲食の仕方を探る研究もみられます。スタンフォード大学などによれば、レストランなどを含む施設の収容人数を5分の1にして営業を続ければ、完全な再開に比べて新規感染を8割以上抑えられるとしています。スーパーコンピューター富岳によれば、正面ではなく、はす向かいに座るだけで、浴びる飛沫の数は4分の1になるとされています。逆に隣に座る人は正面に座る人の約5倍の量の飛沫を浴びています。座る位置を変えるだけで感染リスクを大幅に減らせます。
いずれにしても、屋内で家族以外の者と長時間を共にするような機会を減らすことが必要です。しかし、時短営業の経済的ダメージは大きく、そもそも飲食店対策の根拠となる国内のデータや説明が足りないとの声もあることにより、科学的な検証が必要です。

(2021年2月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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