高等教育の無償化―Ⅰ

国立大学と私立大学の収入構造の違い
 高等教育の無償化の議論がさかんになっています。東京大学の山本清教授は、日本経済新聞において高等教育の無償化について言及しています。高等教育の無償化とは、学生納付金収入が政府によって実質的に負担されることであるから、国立大学では政府の運営費交付金及び学生納付金が、私立大学では補助金と学生納付金がそれぞれ財政支援の額になります。
 これを2014年度でみると、国立大学では46.4%、私立では61.4%が公費負担となり、それぞれ14千億円、37千億円の財政支出となります。これを無償化すると、私立大学全体の実質補助率が6割を超え、国立大学が5割未満となり逆転し、私立の国立化を招きます。無償化は学生の経済負担を軽減する効果の半面、公費負担の公正性と私学の特性を変えるといった可能性も出てきます。高等教育の無償化問題は、財源をどのようにするかという財政面の検討以外に、私立大学と国立・公立大学の性格・役割分担といった根源的な問題を提起しています。

(2017年7月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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