高等教育の無償化

 日本経済新聞の有力大学の学長に対して、高等教育の無償化についてアンケート調査をしています。高等教育の無償化について、15%の学長が賛成、41%がどちらかといえば賛成と答えています。反対は24%です。無償化のメリットとしては、高等教育の機会均等につながるが81%で最多でした。教育費の負担減少で少子化に歯止めがかかるが34%、雇用市場により高度な人材を供給できるが17%と続いています。無償化で懸念されることは、財源の確保が困難が89%と最多です。学費負担の主体が、個人から国にかわることにより、大学経営への国の関与が強まる恐れがあると警戒する見方が37%もありました。学生への経済支援については、給付型奨学金の拡充が85%、授業料減免の拡充が66%を挙げる学長が多くみられました。
 日本は他の先進国に比べると高等教育への公的支出が少なくなっています。大学などへの支出に占める公費割合は34%であり、各国平均の70%を大きく下回っています。研究面では欧米やアジア各国の大学が台頭し、日本勢の地盤沈下が進んでいます。研究力の維持のためには、長期・安定的な研究資金の増額が必要です。人件費削減で教員が補充できず、研究時間が減った、競争的資金では任期付きでしか研究者を雇えない、不安定な雇用で次世代を担う若手が育ちにくいなどが問題点としてあげられます。継続的にイノベーションを起こすには、長期の視野に立った基礎研究が必要になります。そのためには、安定的な資金が必要です。

(2017年12月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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