高齢者における資産運用

権利擁護の視点からは、高齢者であっても資産運用をする権利は守られるべきです。75歳以上の人とは取引をしないといった一律の対応でなく、顧客の能力に応じて対応することが望まれます。しかし、高齢顧客の中から一定の割合で認知症を発症して契約能力が低下する人が出てくることと、その割合が年齢とともに高まってきます。そのため、金融商品の契約などに必要な意思決定能力を持っているかどうかを評価する必要があります。
認知症により意思決定能力が低下した高齢者については、その人の価値観や好みを意思決定に反映させるとともに、理解が不十分なまま契約したり、不当な影響を受けたりすることがないようにすることが大切です。支援のための仕組みとして成年後見制度がありますが、現状では認知症がかなり進行して明らかに財産管理ができなくなり、通帳の解約や不動産の処分などが必要になって初めて利用されることが多くなっています。
図には、成本迅京都府立医科大学教授による、認知機能の低下で起きる事象と必要な対応を示しています。こうしたサービスの開発に高齢者の心理的特性や認知症の特徴を踏まえる必要があります。法律家、認知症の専門医、社会福祉士などの多職種と金融機関の協力を得て、契約に必要な能力の評価や意思決定サポートの手法の開発が必要となります。

(2018年8月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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