3歳児神話に憶う

 子どもが3歳までは、母親が家庭で育児に専念しないと、発達に悪影響を及ぼすといった考え方は、3歳児神話と呼ばれます。欧米の研究で、母性の役割が強調されて広まりましたが、母親に負担が偏るワンオペ育児の要因ともなっています。国は、1998年の厚生白書の中で、3歳児神話について「合理的根拠が認められない」と否定しています。
 高度成長期以降、多くの女性が専業主婦になって、1人での子育てがつらい、こんなはずじゃなかったと悩むケースが多くなっています。しかし、最近になり、女性の活躍が求められ、働き続けたい女性が、子どものために仕事を辞めるべきか、子どもを持つのを諦めた方がいいかと悩むケースが目立ってきています。女性の活躍推進との板挟みに苦しむ女性は多くなってきています。
 内閣府調査によれば、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、賛成は約4割を占めています。男性のみならず女性においても性別役割分担の意識は根強いものがあります。3歳までの期間がとても大切なのは間違いありません。しかし、子どもに愛情を注ぐのは、母親だけでなく父親や祖父母、保育士であってもいいのです。母親が育児に疲弊して情緒が不安定であれば、その子どももその影響を受けます。大人の豊かな愛情のもとで子どもが育つにはどうしたらいいかを考え、支える仕組みづくりを社会が考えるべきです。

(吉村 やすのり)

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