iPS細胞による絶滅危惧種の産出

 絶滅危惧種の動物をiPS細胞を利用して産出する国際プロジェクトが進んでいます。日本からは九州大学と京都大学が加わります。九州大学は、マウスでiPS細胞から体外の培養だけで卵子を作り、体外受精によって赤ちゃんを誕生させた実績があります。国際チームが目指す個体増加作戦は、まずキタシロサイの体の細胞を採取してiPS細胞を作ります。そのiPS細胞を育てて卵子のもととなる細胞に変え、さらに卵子にします。その後冷凍保存しておいた精子と体外受精させて受精卵をつくります。受精卵は近縁種のミナミシロサイの子宮に移植します。しかし、今の技術では、卵子のもととなる細胞から卵子に育てる際に、胎児の細胞がいります。キタシロサイの胎児の細胞の入手は困難で、この細胞もiPS細胞から作らないとなりません。得られた受精卵を移植する技術なども必要となります。
 個体数を増やすには、元の動物の完全コピーを作るクローン技術も選択肢の一つです。体の細胞からDNAの入った核を抜き取り、あらかじめ核を取り除いた卵子に入れ、代理母の子宮に移します。こうすると元の細胞と同じ遺伝子を持った子どもが生まれます。

(2017年3月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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