iPS細胞を使った網膜移植

 京都大学iPS細胞研究所は、健康な提供者の血液からつくって備蓄するiPS細胞ストック事業を開始しています。今回他人から作製したiPS細胞を網膜の組織に変化させ、加齢黄斑変性の患者の目に移植する臨床研究が始まります。計画では大阪大学と神戸市立医療センター中央市民病院で計5人に手術し、安全性を評価します。他人のiPS細胞を使った臨床研究は世界で初めてです。
 世界で初めてiPS細胞を使った移植手術が実施されたのは2年半前です。今回と同じ理研チームが、患者本人の皮膚からiPS細胞をつくりました。現在のところ術後の経過に問題はありませんが、準備や検査に10カ月間、約1億円かかりました。ストック事業では、拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ人に協力してもらい、iPS細胞をあらかじめつくっています。事前に準備した細胞を多数の人に使え、1人あたりの費用も減らせる利点があります。理研チームは、動物実験で免疫抑制剤がなくても拒絶反応が起きないことを確認しています。

(2017年2月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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