iPS細胞ストック

 備蓄するiPS細胞は、日本人の中でも珍しい免疫のタイプを持つ人の血液から作っています。血液細胞の表面などにあるHLAと呼ぶ免疫の型を手掛かりに、他人の細胞を移植しても、体内から取り除く拒絶反応が起きにくい特殊なタイプです。京都大学iPS細胞研究所(CiRA)では、20158月から大学などへ分配を始めています。2017年度末までに日本人の35割程度を、2022年度までに同8割程度をそれぞれカバーできるiPS細胞を分配する計画です。
 ストックの利点は、治療にかかる費用と準備期間を大幅に抑えられることができます。患者本人の細胞を使うと、がん化するかどうか安全性を調べる検査などの手間がストックよりかかり、費用と時間がかかります。患者本人のiPS細胞を使った場合、約1億円の費用と約10カ月の準備期間がかかります。iPS細胞ストックを利用すれば、費用が数百万円に抑えられます。しかし、患者本人の細胞ではないため、拒絶反応が起きるリスクを完全には取り除けません。まずは、安全性の確認が必要となります。iPS細胞を使用した再生医療については、様々な改良が加えられておりますが、臨床応用に値する研究成果はまだ得られておりません。

(2017年4月14日 日本経済新聞)

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