IT技術職の人材不足

企業のDXが加速するなか、IT人材の不足が強まっています。求職者数に対する求人数の割合である求人倍率は、約10倍に急上昇し、全職種で突出して高くなっています。IT職種の賃金が相対的に低いことが人材を集めにくくしています。背景には、日本企業の賃金が欧米のように職種の市場価値に応じて決まらず、年功序列の要素が根強いことにあります。これがDX推進の障害になりかねません。

海外は、職種ごとに賃金体系が異なるジョブ型雇用が浸透しており、賃金が各職種の市場の需給で決まります。米コンサル大手マーサーの調査によれば、人材不足の米国や中国は、IT・ネット職の年収中央値が全職種の中央値を8~10%上回っています。しかし、日本は全職種中央値より2%近く低く、市場の需給が賃金に反映されにくくなっています。

ITスキル取得のコストは割高です。コストに見合うだけの賃金を得にくいため、積極的にスキルを取得して転職しようという動機づけが働きにくくなっています。IT技術職に転じた人のうち、異職種出身者は24%に過ぎません。販売・サービス職の50%や事務職の56%の半分です。

旺盛な需要に人材供給が追いつかない理由の一つは、日本のIT職種の賃金が相対的に低く、働き手にとって魅力的でないからです。ジョブ型雇用の浸透を急ぎ賃金に市場メカニズムが働くようにしなければ、人材不足は解消されません。

(2022年5月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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