M字カーブの変化

 女性の就労が増えています。労働力とみなされる女性の割合を示すグラフをみると、3040歳代の部分が顕著に落ち込むM字カーブと呼ばれる特徴が薄れてきています。わが国のM字カーブは、近年、米国や欧州各国などに似通ってきています。育児休業など企業側の制度整備が進んだことや、働く意欲を持つ人が増えたことが大きな要因です。総務省の7月の調査によれば、1564歳人口に占める女性の労働力の割合(労働力率)は69.7%で、働く女性は着実に増えてきました。年代別では、M字の谷に相当する3544歳の労働力率が前年同月比0.7ポイント増の75.3%に達しています。10年前の20077月と比べると全ての年代で上昇し、全体的に底上げされています。
 高齢化で15~64歳の生産年齢人口は、この10年で700万人以上も減少しました。しかし、実際に働いている労働力人口をみると同じ時期におよそ50万人増えています。女性だけに限れば約200万人増え、M字の底を押し上げています。女性の就労が加速した最大の理由は、企業が離職防止に取り組んできたことです。女性の育休取得率は、やや低下傾向にあるとはいえ8割超で推移しています。育休中の生活を支える政府の育児休業給付金の受給件数は、2006年度の13万件から2016年度の32万7千件へと2倍以上に増えています。経済成長を確かなものにするには、M字カーブを解消し、労働力を底上げするのは理想的な方向性です。さらに女性の就労を後押しするには育児休業などの整備を加速させ、生産性向上と賃上げなどで働き手に報いる努力が必要となります。

(2017年9月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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