RSウイルス感染症の増加

乳幼児が重症化しやすいRSウイルス感染症は、例年は秋ごろに流行するのですが、今年は6月下旬に報告数が急増し、過去の年の流行ピークを超えています。感染しても多くは風邪症状で済みますが、中には重い肺炎を引き起こし、命にかかわることもあります。
RSウイルスは飛沫や接触によって感染します。1歳までに50%以上、2歳までにほぼ全員が感染し、以降も何度も感染しますが、大人や健康な子どもは、発熱や鼻水、咳などの軽い風邪のような症状で済むことが多いとされています。しかし、初めて罹った乳幼児は症状が重くなりやすく、乳幼児の肺炎の約半分はRSウイルス感染症によるものとされています。早産の赤ちゃんや、先天性の心臓、肺疾患などがある子ども、高齢者でも症状が重くなることがあります。
感染研がまとめた全国の定点医療機関約3千カ所からの報告によれば、7月19~25日の1週間で、定点あたりの報告数は4.64です。5.99だった前週より下がったものの、統計がとられるようになった2018年以降で最も多かった2019年秋のピークを依然超えています。地域差があり、宮城が7.88、新潟が11.05、石川が8.14、三重が10.91、兵庫が7.97、和歌山が8.83、徳島が19.78、高知が11.54などと多くなっています。
昨年は、RSウイルス感染症の流行が1年を通じてほぼ確認されない異例の年でした。定点あたりの報告数は最大で0.35で、インフルエンザや手足口病など、他の飛沫や接触でうつるウイルス性の呼吸器感染症もほとんど流行しませんでした。コロナ対策でマスク着用や3密回避といった行動が流行を抑えたと考えられています。コロナの流行で、保育園が休園になるなど感染の場が少なかったことや、海外からの渡航客が少なかったことも要因とみられています。0~1歳の子の多くが昨年は感染を免れたことで、免疫を持っていないことが今年の流行につながったとみられます。

 

(2021年8月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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