X精子とY精子の分別

広島大の研究チームは、受精後に雌になる精子と、雄になる精子の違いを発見し、マウス実験で雌雄の産み分けに成功したと報告しています。畜産業では、家畜の種類や用途により雌雄で市場価値が異なることがあり、産み分け技術への需要が高くなっています。しかし、同一の細胞(精子幹細胞)から分裂し、X染色体を持ち雌になるX精子と、Y染色体を持ち雄になるY精子は機能的な違いはないとされ、効率的な選別は難しいとされていました。
X染色体の遺伝子が作るたんぱく質の中から、TLR7とTLR8という受容体に着目し、この受容体はX精子の尾部にあり、刺激を受けると精子の運動が止まることが知られていました。そこで、試験管に入れたマウスの精子に培養液と受容体を刺激する薬剤を加えて約1時間待つと、運動を止めたX精子は下層に沈殿し、影響を受けないY精子が上層に集まりました。上層と下層からそれぞれ採取した精子を体外受精してマウスに移植すると、上層の約8割から雄が、下層の約8割から雌が生まれたとしています。
ヒトへの臨床応用については、精度が8割程度であること、倫理的問題を含めて、時期尚早と思われます。

(2019年8月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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