自殺防止などに取り組む各地の電話相談で、悩みを聞いてほしくても、電話がつながらない状況が常態化しています。悩みや孤独感を抱える人の話を聴くいのちの電話は、自殺防止のために1953年に英国で始まり、日本ではドイツ人宣教師が中心となって1971年に東京で初めて設立されています。その後、各地に活動が広がり、いまでは社会福祉法人やNPO法人が全国で50のセンターをそれぞれ運営しています。
電話がつながらない最大の要因は、人手不足です。昨年1年間に全国のセンターで受けた電話相談件数は63万6千件で、10年で9万件減少しています。かかってくる電話は依然多いのですが、対応できる件数が減っています。相談員はボランティアで、全国に計6千人いますが、高齢化が進み、この10年で1千人減っています。
厚生労働省によれば、2018年の自殺者数は2万840人で、9年連続で減少しています。しかし、19歳以下はほぼ横ばいの傾向が続いています。つぶやきに耳を傾けてくれる電話相談の窓口は重要な存在です。
(2019年12月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)