がんゲノム医療の普及-Ⅲ

がんゲノム医療体制
国内でがんで亡くなる人は年間約38万人、それに対しパネル検査を受けているのは年間2万人に過ぎません。パネル検査の認知度は低く、一般の人の大半はその存在すら知りません。また、検査を提案されるかどうかは、施設や地域による差も大きく、がんで亡くなる人に対する検査の実施数の比率は、都市圏の3.8%に対し、地域圏は2.3%で、1.5ポイントの有意な差がみられます。
パネル検査が受けられるのは計263施設で、地域のがん医療の拠点であるがん診療連携拠点病院の6割以下です。東京都、大阪府だけで計45施設ありますが、秋田や徳島は県内1カ所のみです。がんゲノム医療連携病院でもない病院では、パネル検査への道筋がみえず、患者に検査の提案もしにくくなっています。一般病院から拠点病院に検査を依頼、紹介できる動線をつくると、検査数の増加につながると思われます。
治療到達率9%を上げるには、遺伝子変異にマッチした薬の臨床試験を増やし、薬の選択肢を増やすことが必要です。日本は、海外で承認されている薬が承認されていないドラッグラグの問題を抱えています。治験そのものの数や参加できる患者を増やすための試みと、遺伝子変異に対応した薬を増やすための研究開発を両輪で進める必要があります。

(2024年2月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。