がんゲノム医療の進歩

100種以上のがん関連の遺伝子について、異常がないか調べられるがんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査)が、2019年に保険適用されました。国立がん研究センターに設立されたがんゲノム情報管理センター(C-CAT)には、パネル検査のデータが集まり、ゲノム解析結果に臨床的意義づけをして、医療機関に提供しています。

一方、それ以前に遺伝子検査を受けた人の中には、複数の変異がわかる検査を受けておらず、治療の機会を逃している可能性が指摘されています。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの実態調査によれば、肺がん患者の遺伝子変異の検査項目の種類はここ1、2年で大きく増え、2022年には50%が5項目以上の検査を受けています。しかし27%は0項目、17%は1~3項目であり、十分な遺伝子検索ができているとは思えません。現在は、治療を始める前にできる限り多数の変異を調べることが主流になりつつあります。

パネル検査を実施しても、薬への到達率が9%と低率です。遺伝子変異にマッチした臨床試験を日本で増やし、薬の選択肢を増やすことが先決です。抗がん剤は年々進化しています。これまでなかった特殊な抗体医薬や低分子薬、核酸医薬、細胞治療など新しいタイプの薬が世界で次々につくられています。特定の遺伝子変異が見つかれば、進行がんでも1剤で年単位の生存延長ができる時代になってきました。

(2024年2月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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