国は、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)やがん対策推進基本計画で、患者に最適な医療を提供するがんゲノム医療の推進を打ち出しています。国が、100種類以上の遺伝子を一挙に解析するパネル検査を保険適用の対象とすることにしています。保険適用後、患者の自己負担は最大で公定価格(薬価)の3割で、今より大幅に軽くなります。
国内で1年間に約100万人もがんと診断される中、誰もがパネル検査を受けられるわけではありません。対象は、①標準治療が効かなかった、または再発した、②希少がんなどで標準治療がないといった患者になる見込みです。医療機関も限定されています。パネル検査は、全国11か所の中核拠点病院か156か所の連携病院で受けられます。2~3週間で出る検査結果に基づいて治療方針を決めるのは、主として専門家がそろう中核拠点病院です。連携病院は単独で判断できず、その協力を得なければなりません。現状では、治療薬の選択肢が少なく、パネル検査の結果、新たに治療薬が見つかるのは2割以下とのデータもあります。現在は、検査技術の進歩に治療法の開発が追いついていない状況です。
(2019年5月19日 読売新聞)
(吉村 やすのり)