中高年と比べて、子どもや若い世代のがんの生存率は高くなっています。国立がん研究センターの統計によれば、5年生存率は、0~14歳では白血病で88%、リンパ腫で91%、脳腫瘍で75%。15~39歳のAYA世代では乳がんで90%、子宮頸部・子宮がんで89%などとなっています。
がん患者においては、がんの治療が最優先されますが、これまで治療後のことは後回しにされがちでした。抗がん剤、放射線、あるいは手術によって、不妊リスクがあっても、これまで説明を受けることはありませんでした。しかし、がんサバイバーが増えてきて、卵子、精子の凍結保存といった妊孕性温存が、選択肢として認知されるようになってきています。
日本癌治療学会は、2017年に診療指針を公表し、治療が不妊につながると予想される場合、治療開始前に可能な限り早く患者と話し合いの場が設けられるべきだとしています。がん治療が何よりも最優先されるべきですが、妊孕性温存についての情報提供はされるべきです。
妊孕性温存について、以前よりも格段に情報提供されるようになりましたが、まだ患者に行き届いていない場合が多くみられます。治療中に妊孕性温存を選べなくても、治療後すぐなら卵巣機能が残っていて、卵子の採取が間に合うケースもあります。妊孕性温存を考える上では、がん治療に携わる小児科から婦人科に患者をつないでいくことも重要です。
(2022年2月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)