補完代替療法で気をつけるべき点は、まず健康被害です。健康食品は食品で天然由来成分だから、薬の副作用のようなマイナス面はないと思う人もいるようですが、蕁麻疹や下痢などの症状が出ることも、肝臓など内臓に影響することもあります。病院で出された薬の副作用を強めたり、逆に作用をなくしたりという可能性もあります。
経済被害の可能性もあります。国民生活センターには、健康被害が出たので解約したいが応じてくれない、高額な解約料を請求されたといった事例が多く寄せられています。高額なものほど良いという認知バイアスがあります。本当にその価値に見合う価値があるか、冷静に考える必要があります。疑問があったら自分や家族で判断せずに、主治医やその領域の専門家に聞くことが大切です。
がんの情報を検索すると、健康食品や民間療法を紹介するサイトや動画に行き当たります。補完代替療法に患者がひきつけられるのは、不安や辛さがあるからです。医師は、患者のメンタルケアにも関心を持つべきです。人は不安や恐怖に駆られていると、冷静な時には絶対にしないような判断をしてしまうことがあります。医師の側が患者の心理に想像力を働かせて話を聞いたり伝えたりすることが大切です。
がんに対する健康食品や民間療法は、エビデンスのないものがほとんどです。抗がん剤は体に毒だからすぐ止めてこのサプリを、病院の検査でがんが悪化するから行くのを止めましょうと、病院での標準治療を否定するような療法には近づいてはいけません。いずれにしても、サプリで医学的エビデンスのあるのは、葉酸などわずかです。
(2023年11月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)