免疫チェックポイント阻害剤は、体内にある免疫の力を利用する抗がん剤の総称です。がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃するスイッチを入れる仕組みで働きます。オプジーボは皮膚がんから始まり、肺がんや腎臓がん、リンパ腫、胃がんなどに適用を広げ、多くの患者に投与されています。課題は治療効果のある患者が限られる点です。オプジーボの場合、効果があるのは投与したうちの2~3割ともいわれています。半数以上の患者で効果がなく、その理由は不明なままです。
一般的な抗がん剤はコンピューター断層撮影装置(CT)などの画像診断をもとに、がんの縮小などから効果を判定します。通常、治療開始から約3カ月かかります。効果がなければこの間にがんが進行してしまいます。免疫チェックポイント阻害剤の場合、現状では手術などで取り出したがん組織をもとに、免疫細胞の働きを抑える働きをするたんぱく質であるPD-L1の量や遺伝子変異の蓄積量などを調べ、効果を予測しています。しかし、手術から時間がたつとがんの性質が変わる場合もあり精度が低くなってしまい、世界中で効果を判定する研究が進んでいます。
新手法で評価すると、治療開始から1カ月の時点で96%の精度で効果を予測できるとしています。血液中のがんを攻撃する免疫細胞の比率を調べることにより、治療効果が判定できる方法が開発されています。腸内細菌や免疫細胞の代謝などに関わる4種類の物質を調べると、治療開始から1カ月の時点で8割以上の精度で効果を判定できるとしています。また、血液中のマイクロRNAの量の解析により、オプジーボが効く人を99%の精度で識別できる方法を開発されています。
(2020年2月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)