さまざまな免疫の仕組みを活用し、がん細胞を攻撃する治療法の研究が進んでいます。免疫療法は、がん治療の基本である手術、抗がん剤、放射線照射に並ぶ標準治療の一つになり得ると考えられています。がん細胞が免疫にブレ-キをかける仕組みを標的にした研究で注目されているのは、制御性T細胞です。
制御性T細胞とは、免疫応答の抑制的制御をつかさどるT細胞のことをいいます。免疫応答機構の過剰な免疫反応を抑制するためのブレ-キや正常な免疫を維持するために重要な役割を果たしています。制御性T細胞を減らすとともに、がんワクチン療法なども組み合わせれば、がんの3割程度は将来、免疫療法だけで治るようになるかもしれないといわれています。しかし、副作用の問題です。米国で開発された薬は、免疫が暴走する自己免疫疾患などの副作用が出たことが報告されています。
(2015年10月⑤日日本経済新聞)
(吉村 やすのり)