高齢のがん患者が、自分で最善の治療を選ぶためには、正確な情報が不可欠です。がんの治療法や病院に関する情報の入手先としては、医療機関の医師・看護師の他、インターネットで情報を得ることが多くなっています。入手が手軽なインターネット上の情報の中には、科学的な根拠を伴わないものも多くみられます。標準治療以外の免疫療法、極端な食事療法など、ネットに掲載された宣伝や記事をきっかけに、こうした治療にはまり、症状が悪化したり副作用に苦しんだりした高齢患者が多くみられます。昨年の総務省の調査では、ネット利用者は、60歳代で76.6%、70歳代で51.0%、80歳代以上で21.5%にも達しています。
日本医大武蔵小杉病院の腫瘍内科の勝俣範之教授のデータによれば、科学的根拠がある情報を紹介していたのはわずか1割に過ぎません。民間療法の誇大広告など危険で有害なサイトが4割を占めています。がんが進行する不安から、ネット上の不適切な治療法に飛びつく人が実に多くなっています。ネット情報だけを頼りにすると、最悪の場合命を脅かす結果になりかねません。まずは専門医に相談すべきです。
(2019年10月30日 読売新聞)
(吉村 やすのり)