がん遺伝子

 がんは、一般的に遺伝要因や食生活や喫煙などの環境要因、加齢などで発症します。乳がんの発症は、約510%が生まれつきの遺伝子変異による遺伝性とみられています。病的な変異があると乳がんや卵巣がんのリスクが高くなる主な遺伝子が、BRCA1BRCA2です。変異があれば、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と呼ばれます。BRCA1に変異を持つ女性は、70歳までに約60%が乳がんを、約40%が卵巣がんを発症するという推計もあります。男性では、前立腺がんや、まれに乳がんになる場合があります。
 遺伝子変異が見つかると、検診することと予防的切除などが選択肢になります。乳がんは、こまめな検診で早期発見できる可能性があります。しかし、卵巣がんは進行した状態で発見されることが多く、死亡率も高いとされております。日本婦人科腫瘍学会などがつくる治療ガイドラインでは、遺伝子変異がある人には予防的切除が推奨されています。国内では、遺伝カウンセリングや遺伝子検査、予防的切除は、公的な医療保険の適用外であり、患者の経済的負担は大きくなります。

(2016年1月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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