国立がん研究センターなどの研究班が、1月にがんの10年生存率を公表しています。がん治療の目安は5年とされることが多かったが、乳がんなどはかなり長い時間がたっても再発のリスクがあることも分かり、10年生存率が用いられるようになってきています。すべてのがんの10年生存率は約58%であり、部位別でみて治療成績がよかったのは、甲状腺や前立腺、乳腺、子宮体部、子宮頸部のがんで70%を超えています。一方、食道、胆嚢・胆道、肝臓、膵臓のがんは厳しい状況でした。
生存率はがんの大きさや広がり具合を表す4段階(Ⅰ~Ⅳ)の病期によって大きく変わります。どの部位も早期に見つけることができれば生存率は高くなります。例えば、食道がんは早期がんであるⅠ期では約64%ですが、全症例では2分の1になってしまいます。しかし、膵臓がんは早期のⅠ期で見つかっても厳しい状況です。がんの進行が早く、小さいうちから周囲に広がったり離れた場所に転移したりするからです。肝臓がんは手術で切除しても、別の部位から再発しやすく、根治はなかなか困難です。乳がんは、治療後時間がある程度たってから再発する例が専門医の間ではよく知られています。
がんでは定期的に検診を受け、できるだけ早期にがんを見つけて治療することが重要です。40歳以上で胃、肺、大腸などのがん検診の受診率は3~4割にとどまっています。国はこの値を5割に引き上げることを目指しています。
(2016年2月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)
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