こども未来戦略の加速プラン

人口を維持できる水準の合計特殊出生率である人口置換水準は、今の日本では概ね2.07です。1970年代前半の第2次ベビーブーム以降、出生率はその水準を下回り続けています。2022年の出生数は過去最少の約77万人、出生率は最低の1.26でした。やはり1.26だった2005年には、約106万人が生まれています。それだけ親世代が減っているのです。
出生数の減少割合を10年ごとに見ていくと、1990年から2000年までは約10%、2020年までは約22%でした。対策が遅れるほど、流れは変えにくくなります。2030年までがラストチャンスと政府が強調しています。政府は、2023年12月にこども未来戦略を閣議決定しました。加速化プランに必要な予算は年間3.6兆円と見積もっています。これにより子ども1人当たりの家族関係支出は、OECDトップ水準のスウェーデン並みになります。
経済界、労働界、学識者などの有志による人口戦略会議は、1月に2100年に人口8,000万人での安定を目指す提言をまとめました。その前提条件として、2060年には合計特殊出生率が2.07になる必要があります。2040年ごろまでに1.6、2050年ごろまでに1.8が望ましいとしています。一方、日本の最新値は1.26で、1.6まで上昇させることは困難です。手厚い支援で知られるフランスでも1.8ほどです。子どもを持つかどうかはもちろん個人の選択です。若い世代が希望を抱きやすく、叶えやすい社会にどう変えるか、覚悟を問う数字です。

(2024年1月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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