たばこの煙には、発がん性物質が約70種類も含まれ、喫煙はがんや脳卒中、虚血性心疾患などの原因となります。また、副流煙には、喫煙者が吸う煙の数倍の有害物質が含まれ、それを吸い込む受動喫煙は周囲の人の健康に悪影響を及ぼします。国立がん研究センターの推計によれば、国内では年間の死亡者数の約1割に当たる12万~13万人が、喫煙が原因で亡くなっており、受動喫煙が原因で亡くなる人も、年間約1万5千人に上っています。
社会に与える経済負担も大きく、厚生労働省研究班によれば、2015年の1年間で喫煙による経済損失は、医療費が1兆5,389億円、それ以外の介護費用や清掃費用などが2,705億円で、計1兆8千億円と見積もられています。
政府は、2022年度に成人の喫煙率を12%に下げるとの目標を掲げています。しかし、近年は下げ止まり、2018年は17.8%と目標達成が危ぶまれています。禁煙を促す政策手段が決め手を欠く中、たばこの値上げは、禁煙意欲を高める上で有効とされてきています。日本のたばこ価格は、世界的に見てまだ安すぎます。さらに値上げして禁煙したい人を支援すれば、禁煙の成功率を高めることができます。たばこの値上げは、性別や学歴に関係なく、長期的な禁煙に結びつくと考えられています。
(2020年12月26日 岐阜新聞)
(吉村 やすのり)