大阪大学グループは、ふくらはぎの細胞から作ったシートを心臓に移植し、重い心臓病の子どもを治療する医師主導による臨床試験を始めました。今後19歳未満の3人に実施し、安全性や治療効果を確かめることにしています。治験の対象は、心筋の働きが悪くなって血液を送り出すポンプ機能が次第に低下する拡張型心筋症の患者です。重症化すると根本的な治療は心臓移植しかありません。子どもの臓器提供者は少なく、移植を待つ間に症状が悪化して死亡することもあります。
治療ではまず、患者のふくらはぎから筋肉の元となる筋芽細胞を取り出して培養し、直径4~5センチのシートを作ります。数枚を本人の心臓に貼り付けると、シートから出るたんぱく質が心筋の機能を回復させます。子どもは提供者の不足が大人よりも厳しい状況にあります。重症化する前にこの治療で治すことも可能になることが期待されます。また、移植を待つ間の治療的手段に応用できるかもしれません。
(2016年4月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)