ふるさと納税が拡大しています。総務省の発表によれば、2024年度の寄付額は計1兆2,727億円と前年度比で14%増え、5年連続で過去最高を更新しています。物価高を受けて家計の負担軽減のため始める人が増えており、コメを返礼品とする地方自治体への寄付が伸びています。
寄付で潤う自治体は偏っています。ふるさと納税に参加する全国平均約1,700自治体のうち、寄付額の上位100団体が総額の5割弱を占めています。消費者受けする返礼品の有無で寄付額に差がつきやすく、自治体への応援という制度本来の趣旨はかすんでいます。
都市部では、ふるさと納税による税収の流出が拡大しています。控除額に対して寄付の受け入れ額は小さく、差し引きで大幅な減収となっています。都市部の税控除額が大きいのは、ふるさと納税を利用するメリットの大きい高所得者が多いためだとみられます。高所得者はもともと税負担が大きいため、より多くの金額を寄付して高額な返礼品を得ようという考えになっています。ふるさと納税の弊害を抑えるには、募集経費の上限引き下げや税控除の縮小といった対策が必要となります。

(2025年8月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)