大学院の博士課程に進む学生が減り、研究を担う人材の不足が懸念されています。現状を放置すれば、企業も含めた日本の研究力の一段の低下につながりかねません。欧米を中心に、海外の主要国は手厚い経済的支援などを通じて博士を積極的に育成しています。日本は支援が手薄で授業料などの負担が重く博士課程進学が敬遠される要因になっています。国家的な課題として博士を育成すべきです。
年功序列ではなく実力主義を重視する企業が増え、高い専門性を持つ博士の価値を見直すことが必要となっています。技術の進歩が加速し、国際競争も激しくなる中、多くの企業がイノベーションを生み出す人材を強く求めるようになってきています。大学も教育内容の充実などを通じ、企業でも活躍できる高度な人材を育てる体制を整える必要があります。研究者の卵である博士は、日本の将来を担う貴重な人材です。政府は産業界や大学と密接に連携し、育てた人材を日本としてどう活用するのか、明確な道筋をつける必要があります。
(2020年2月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)