わが国のジェンダーギャップ指数の低迷

スイスの世界経済フォーラム(WEF)が毎年出しているジェンダーギャップ報告書で、日本は今年146カ国のうち125位でした。それまでで最も低かった2020年版の121位からさらに順位を落としました。2012年版の報告書で101位に転落して以来、2桁の順位には戻っていません。主要先進国の中でも最下位が続いています。

 

今年の報告書によれば、識字率や進学率が問われる教育と、健康寿命などを含む健康の分野では、日本は男女平等の状態に近くなっています。課題は政治と経済の2分野です。政治分野の評価項目である衆議院の女性比率が1割と低く、女性閣僚もわずかです。過去に女性首相が誕生したことがないことも、大きく足を引っ張っています。経済では、役員や管理職の女性比率が低いことが順位を押し下げています。
衆院選で女性の候補者を増やすことが不可欠です。首相の指導力で、閣僚に女性を増やすことも重要です。企業は女性の採用や育成、登用をもっと積極的に行う必要があります。企業の女性登用を後押ししているのは投資マネーです。取締役会が多様性を確保することで、適切な経営判断につなげられるとの期待があります。環境(E)・社会問題(S)や企業統治(G)への企業の対応について、株主の立場でしっかりとかかわるESG投資や責任投資といった考え方も広がっています。
様々な経験や生き方をしている人の視点を政策に採り入れられれば、より暮らしやすい社会になります。そのためにも女性の政治参加が必要となります。会社経営にも多様な視点がなければ、競争力が弱まるともされています。そもそも男女の平等を実現するのは、人権の視点で重要です。選択的夫婦別姓や性的マイノリティー(LGBTQ)も含めた多様性の確保を、社会全体で進める必要は益々高まっています。

(2023年6月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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