わが国の創薬研究の遅れ―Ⅱ

研究開発規模と効率
日本は植物や動物などが持つ化合物を科学的に改変し、合成した低分子薬を得意としてきました。21世紀に入り主流は、低分子薬からバイオ創薬に移っています。病気の原因の分子に固く結びつく抗体医薬は効果が強く、がんや自己免疫疾患などが治療できるようになっています。薬価は高く、年1,000万円を超える抗体医薬も珍しくありません。低分子医薬にたけていた日本企業は、バイオ創薬に出遅れてしまいました。
バイオ創薬は幅広く、高度な技術が必要です。資金も必要となりますが、日本企業の研究開発費は欧米企業に比べ少ない状況です。研究開発の効率の高さをみて、上位20社のうち日本企業は2社にとどまっています。日本企業は額、効率ともに見劣りしています。

創薬の難易度が増し、産学連携も重要になります。欧米は、大学の先端的な研究成果を基にスタートアップが起業しています。初期の臨床試験を経て、大手製薬企業が買収し、実用化につなげる例が多くなっています。日本は投資家層が薄く、橋渡しを担うスタートアップが育っていません。企業が再編によって資金力を高めるだけでなく、国として創薬をしやすい仕組みを整えなければなりません。

(2021年12月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。