わが国の合計特殊出生率は戦後1949年の第1次ベビーブームの時に4.32と最高に達し、生まれた子どもの数も270万人であった。その後、1973年に第2次ベビーブームの時に合計特殊出生率は、2.41と一時的な上昇はみられたものの、第3次ベビーは訪れることなく、減少の一途を辿っている。そしてついに2005年には合計特殊出生率は1.26と最低値を示したが、2012年に1.41まで上昇し、あたかも少子化が回復傾向にあるようなニュースが独り歩きした。しかしながら、一方で出生数は前年比およそ2万人減の103万人と過去最少となった。少子化がこのまま進めば、労働人口の減少は深刻な問題となり、国内労働力不足、産業力の低下、国内産業のさらなる空洞化を招くことになる。
また並行して晩婚化が加速し、第1子出産時の母親平均年齢が前年から0.2歳上がって30.1歳と初めて30代に突入するなど、依然として日本社会が危機的状況にあることを忘れてはならない。実際このペースで進むと2055年には出生率が年間50万人を下回り、65歳以上の高齢化率は40%を超える計算となり、年金や社会保障の問題以前に国家存続の危機に立たされると思われる。
世界を見渡しても、人口が減少している国は少数であり、アメリカ、イギリス、フランスやスウェーデンといった多くの欧米諸国では、今後も人口が増え続けると予測されている。わが国と同様に人口が減少すると考えられているのはドイツやイタリアだけである。今後わが国は他の先進諸国に例のない急速な人口減少と高齢化といった重要課題に直目することになる。わが国の高齢化率は、欧米諸国の2倍以上のスピードで上昇している。
(吉村 やすのり)