わが国は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に不可欠な先端IT(情報技術)人材の育成が遅れています。国際労働機関(ILO)などのデータを比べると、米国の409万人やインドの232万人、中国の227万人に次いで世界4位です。しかし問題は人材の質です。
経済産業省によれば、2018年のIT人材の9割が、ウェブやアプリを開発する従来型IT人材です。AIやIOTなどを専門とする先端IT人材は、1割しかいません。先端IT人材は、今後逼迫し、不足人数は2030年に27万人と、2018年の13倍に増える見通しです。従来型IT人材のリスキリングでは追いつきません。
求められるのは、数学や科学などSTEM分野の教育を受けた人材です。米国では、スタンフォード大学などでSTEM分野を学んだ卒業生が米IT大手で働いたり、起業したりしています。日本の自然科学・数学・統計学分野の卒業生数は、2018年に約3万人と米国の10分の1です。卒業生の2014~2018年の年平均増減率も、日本は0.4%減と、フランスの10%増やイタリアの7%増などに見劣りしています。
スイスのビジネススクールIMDの世界デジタル競争力ランキングによれば、2013年に20位だった日本の総合順位は、2020年に27位に落ちています。とりわけ人材に関する評価が低くなっています。DXを担う人への投資を怠れば、日本の競争力がさらに劣後する恐れが出てきます。
(2021年9月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)