わが国のPCR検査のあり方

検査が受けられるのは、かかりつけ医や保健所が紹介する帰国者・接触者外来と呼ばれる医療機関や、地域の医師会が設置する検査センターに限られています。新型コロナの検査は、感染症法に基づく行政検査と位置付けられています。検査を実施する医療機関は、都道府県や保健所設置市などから検査の委託を受けます。患者の自己負担(PCR検査の場合で最大5,400円)は公費で補填され、患者負担は発生しません。
日本医師会は、新型コロナウイルスの検査を身近な診療所で受けやすくするよう政府に提言します。かかりつけ医が検査できるように行政手続きの省略を求めています。現状で検査が可能なのは、全国約3千の医療機関など、全体の3%程度に限られています。コロナ感染が再拡大する中、世界に後れをとる日本の検査拡充は、待ったなしの状況にあるとマスコミなどでも指摘されています。
確かに諸外国に比べ、人口千人あたりの累計検査数は低率のままです。しかし検査数が多い米国や英国で、重症患者や死亡者数が減少しているとは思えません。検査ができる体制を整備することは必要ですが、医師の判断で検査が受けられるようにすることはより重要です。また検査が必要な患者の結果判定までの時間の短縮が必要です。発症から判定までの時間が長引くと、感染者の隔離が不十分になったりする恐れがあります。

 

(2020年8月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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