資本コストを意識した企業経営の重要性が高まる中、企業で投資家向け広報(IR)の助言など物言う株主に備えるコンサルティングの重みが増してきています。背景にあるのが、国内でアクティビストの活動が盛んになっていることが挙げられます。日本シェアホルダーサービスによれば、2023年にアクティビストが日本企業の株式を取得した会社数は、5年前から75%増の93社に達しています。韓国やカナダを上回り、国別では米国に次ぐ世界2位です。
株式持ち合いの解消で安定株主が減る中、機関投資家の資金が流入するなど、企業の株主構成が複雑になってきています。株主構成の実態が分かれば、株主総会で可決の難易度が高そうな案件の票読みに加え、仮にアクティビストからTOB(株式公開買付け)提案などを受けた場合、対抗策などのシミュレーションもしやすくなります。
アクティビストの提案が契機となり、企業が事業の売却やM&Aに動き出す可能性があります。メガバンクグループの信託銀行が企業向けのコンサルに力を入れるのは、信託銀行を起点としたビジネスチャンスが生まれやすくなっているためでもあります。
(2024年3月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)