国内で豚コレラの感染が拡大する中、農家や専門家らがさらに恐れる家畜の伝染病が中国で猛威を振るっています。それはアフリカ豚コレラです。アフリカ豚コレラは、発熱や下痢などの症状は似ていますが、豚コレラとは違うウイルスが原因の病気です。人には無害ですが、豚にとっては最も深刻な死の病です。感染すると、皮膚や内臓で出血し、ほぼ10日以内に死んでしまいます。有効な治療法はなく、予防のためのワクチンも存在しません。
アフリカ豚コレラが世界に広がっているのは、ウイルスが並外れて頑丈なことによります。生の豚肉の中では3カ月、冷凍しても3年ほど感染力を保ち続けます。薫製や塩漬けにしても、1年近く持つという報告もあります。ウイルスを殺すには、肉全体を摂氏80℃以上で少なくとも3分加熱する必要があります。ウイルスが加工品にいったん混ざってしまうと、感染拡大を防ぐのは難しくなります。アフリカ豚コレラの脅威は、日本にも忍び寄りつつあります。感染源となるのは、中国やベトナムといった感染国の旅行客が違法に持ち込む豚肉製品です。
(2019年3月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)